01 // Twinkle, twinkle, little star


門まで来ると、ふと頭にさっきの"彼"が浮かんできた。
私は不思議に思いながらも、頭を左右に振って再び歩き始めた。だけれど彼の事は一向に頭から離れてくれない。
私は何も考えないように、柚の事を考えようと必死で居た。
少しだけ目を瞑って、歩いていると。
「おわっ」
又もや何かにぶつかり、後ろへ下がって尻餅を付いた……なんて朝みたいな光景にはならず、
……私、止まってる? いや、私の手に何か感触がある。 って事は誰かが掴んで……?
私は踏ん張って立ち上がる。 そして膝に手を置いて、上をゆっくりと見上げる。
「あ……!」
私の目の前には、朝の彼が居た。 彼は少しだけ驚いた顔をしたが、そんな顔は直ぐに消えてゆっくり微笑んだ。
私は目を見開いたままだった。 だって……こんな偶然ってそんなに無いでしょう……ね……。
膝においていた手を体の横に戻して、膝をまっすぐに伸ばした。
朝のノートとペンを取り出して、私はノートに何かを書き始めた。
書き終わると、私はにこっと微笑んで、その紙を彼に渡した。
"ありがとうございます。
 次に倒れそうになったのは私だけでしたねっ
 手、掴んでくれてありがとうございました!"
そう書かれた紙を彼に渡して、私は何かを思い出したように道の先を見た。
「……柚っ!」
私は柚が家に来るという事を思い出して、柚の名前を口に出した。
ぶつかった衝動で落ちた鞄を手に取り、走り出そうとした。
……だが、私が走ろうとしても体が動かず、手首が痛むだけだった。
私はまさかと思い、ゆっくり顔を手首へと回した。
彼の手には、私の手首がしっかりと握られている。
  
「あの……?」
私は目を見開きながら口に出したが、伝わる事は無く。
二人は固まるままだった。
彼は自分の手の先をゆっくり見つめて、自分が何を掴んでいるのかと言う事を知ったのか、顔を赤らめた。
私はその手をゆっくり離そうとすると、
「ふわっ……」
自分の足に自分の足をひっかけて、転びそうになる。
彼はびっくりして、今まで掴んでいた手を離してしまった。
「……っ」
先程みたいに止まる事はなく、日和は道端で"寝てる……?"と思われそうな、背中を地面に当てて、仰向けになっていた。
「……いた……」
私はゆっくりと起き上がろうとしていた。