残り時間は一日だけ
 


私が目を覚ますと、辺りに広がっていたのは
真っ暗で何も見えない、闇の世界。
私はその世界の真ん中に、
ただただ立っている。
自分の手を見ると、何か
透けているような気がした。
少し吃驚していると、何処からか低い声が聞こえた。

「お前の余命は一日だ」

その声と同時に、目の前に
何か光ったものが現れた。
私は手を目の前に翳(かざ)し、
眩しいように目を細めた。

「…っ…」

余りにも光りすぎて、
言いたい事を言う事ができないままでいる。

「…なんで…」

やっとのことで声が出せた。
私は細めていた目をゆっくり見開き、
手を元に戻す。
すると、目の前の眩しい光は
どんどん消えて行く。

「…生きたいか?」

再び、先程の低い声が
闇中に広がった。
目を皿にして目の前のものを見ると
なにやら羽の生えた人の形をしており、
口元辺りだと思われる場所が
パクパク動いている。
…口に出しているのはこの人…?
…いや、明らかに人間ではない
背中に、悪魔の羽のようなものが…。
…ということは、私は今
悪魔の目の前にいる…?
そんな事を考えたが、私は口を開いた。

「生きたいに決まってるっ! だってまだ私は15だよ?」
「…そうか ならばこの私と契約するがいい」
「…けい…やく?」

いかにも悪魔が口に出しそうな言葉
"契約"、という言葉。
私は少し考えたが、
決心した。

「それで生きられるんだよね?」
「…とりあえずは 生きてると言う事になる」
「とりあえず…?」

私はそう問いかけたが、
目の前の悪魔と思われる人物…は
何も返事をしてくれなかった。

「手を差し出せ」
「は…?」
「手を差し出せと言っているんだ」

これ以上逆らったらどうなるか分からない、
そう思い、私は命令どおり両手を前に差し出した。
すると、私の手の上に、
悪魔の羽ペンとなにやら紙のような物が現れた。
私は驚いたが、手を引っ込める余裕もなく、
その紙とペンは私の手の上に乗った。

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